2016年度の弊社ユーザー会 『VINAS Users Conference 2016』(以下、ユーザー会)を、東京コンファレンスセンター・品川において2016年10月13日(木)、14日(水)の2日間に渡って開催致しました。航空宇宙、重電重機、自動車、船舶、鉄道、建設・土木などの幅広い製造業界から、弊社製品のユーザー様ならびに弊社製品をご検討頂いている多数のお客様のご来場を賜り、成功裡 に終了致しました。本年のユーザー会では、メインテーマ『大規模・最適設計・ワークフローマネージメントのための総合ソリューション –オープンソースとクラウドコンピュータの設計利用-』のもとに4つのテーマに関する専門セッションと8つのワークショップを展開しました。

オープニングセッション
~大規模・最適設計・ワークフローマネジメントのためのソリューション~

オープニングセッションにおいて弊社代表取締役社長 藤川泰彦より、「大規模・最適設計・ワークフローマネジメントのためのソリューション」と題して、オープンソースとクラウドコンピュータの設計利用をテーマにプレゼンテーションを行いました。CFD設計業務には、「ソルバ運用コストの低減」、「最適化設計コストの低減」、「目標レベルの向上をいかに実現するか」の3つの課題があることを明らかにし、課題解決のためのソリューションとして、オープンソースソフトウェアの実務への適用と利用促進のための総合サポートの2つを提案致しました。弊社では、英国Engys社が開発したOpenFOAM®の強化版HELYX®の販売とサポートだけでなく、米国Sandia国立研究所が開発したオープンソースソルバ型多目的最適設計システムDAKOTAのサポートサービスを提供しています。 更にCFD解析データの増大に対応するソリューションとして、社内サーバーとクラウドサーバーの簡単な切り替えが可能なクラウドコンピュータ利用支援システムCCNVと、SaaS形式でCFDアプリケーションを実行するV-SaaSサービスの利用を提案しました。弊社では更に、今後強化するサービスとして不確かさ解析(Uncertainty Quantification)と人工知能の構築サービスの提供を行う予定です。

基調講演-1:大規模解析はイノベーションを生み出せるか

東京理科大学工学部情報工学科 教授 藤井 孝蔵様より、「大規模解析はイノベーションを生み出せるか」と題して、形状工夫不要な流体機器設計の実現を目指すCFDを例に、真のプロダクトイノベーションである限界突破の手段に関する基調講演を頂きました。産業界において大規模化・高精度化が進むシミュレーションが生み出したイノベーションを、実際のプロジェクトを引用し、その成果を説明頂きました。流体力学分野におけるスーパーコンピュータ利用にとどまらず、更に、航空機運行などの「交通流」の大規模解析による社会課題の解決などの社会問題へのシミュレーション技術応用などの取り組みのご紹介を頂きました。

基調講演-2:スーパーコンピュータが拓く創薬計算の未来

京都大学大学院医学研究科 教授 奥野恭史様より、「スーパーコンピュータが拓く創薬計算の未来」と題して、製薬会社22社との共同による取り組みであるスパコン創薬、ビッグデータ創薬の事例と、今後の創薬計算の可能性についてスーパーコンピュータ「京」による創薬シミュレーションに関する基調講演を頂きました。化合物とタンパク質の結合予測を超高速で行うビッグデータ創薬と、精緻な結合シミュレーションによる予測精度の劇的に向上させるシミュレーションの実用性検討の取り組みなどをご紹介頂きました。今後は、医療分野にスパコン・AI・ビッグデータ・シミュレーションといった工学的アプローチが入ってくることで、創薬や医療分野における更なる進歩が期待されています。

メインセッション

海外から6名、国内から16名のゲストスピーカーを招聘し、国内外のユーザー様による事例や欧米の開発元による最新製品情報などを、次のの4つの専門セッションで、ご発表頂きました。

・ Day 1 ホール A : CFDプリ・ポストとオープンソースソルバ
             ホール B : 医療・創薬と大規模解析
・ Day 2 ホール A : HELYX®(OpenFOAM®)とターボ機械設計
                              (自動車・ターボチャージャー・一般回転機器)
             ホール B : 最適設計とワークフロー自動化(航空宇宙・重工業・自動車機器)

CFDプリ・ポストとオープンソルバセッションでは、例年通りFieldViewの開発元の米国Intelligent Light社とPointwise開発元の米国Pointwise社にからプリ・ポストにおける最新動向と製品開発の最新情報のプレゼンテーションを、本田技術研究所様から「京コンピュータを用いた実車サイドミラーの境界層剥離を予測するWall-Resolved LESの適用」、宇宙航空研究開発機構(JAXA)様から「宇宙機開発における複雑形状対応と大規模格子生成に関する課題」と題したケーススタディーをご発表頂きました。

最近特に注目されているOpenFOAM®の強化版HELYX®では、開発元の英国ENGYS社から「HELIX:オープンソースの限界を超えて」と「HELYX®による実用計算:実務で使えるオープンソースCFDソフトウェア」の2つのプレゼンテーションを、千代田化工建設様から「オープンソースを活用したエンジニアリング技術の高度化」、川崎重工業様から「HELYX®を用いた船舶流体解析の事例紹介」と題したケーススタディのご発表を頂きました。

また今年のユーザー会では、HPCクラウドの導入・適用が進んでいる医療・創薬と大規模解析をテーマにした専門セッションを設け、京都大学大学院医学研究科 教授 奥野 恭史様から基調講演「スーパコンピュータが拓く創薬計算の未来」を、先端医療振興財団様から「HPCと連携した高精度予測計算用創薬アプリケーションの開発と展望」、帝人ファーマ様から「HPCを活用した革新的創薬基盤への期待~KBDDコンソーシアム事例紹介~」の2つのケーススタディーのご発表を頂きました。
参加されたお客様のコメントのいくつかを以下にご紹介致します。

  • 国内ユーザーによる適用事例が幅広く取り上げられていて非常に参考になりました。次のユーザー会では、Phoenixの海外企業による適用事例を希望します。
  • DAKOTAのセミナーセッションとワークショップに参加しました。DAKOTAによる不確かさ評価の事例を知りたいです。
  • プリ・ポストとHELYX®、DAKOTAのセッションに参加しました。今後も引き続き大規模解析と最適設計を継続して取り上げてください。
  • 初めて参加しましたが開発元、ユーザー事例、ヴァイナスのセッション共に丁寧に説明されていて、わかり易く快適に聴講できました。特に、大規模空力シミュレーションが参考になりました。
  • 東京理科大学 藤井先生、京都大学 奥野先生、東京大学 加藤先生の講演を聴講しましたが、毎年最先端の取り組み状況の情報を得られるのでありがたいです。

ワークショップ

今年は、ユーザー会メインセッション開催前日の10月12日(水)にFieldView、Pointwise、HELYX®、OCC-Expert、TURBOdesign、Phoenix、DAKOTAを対象に8つのワークショップを、各製品の開発元から講師をを招聘して開催致しました。
ワークショップのアンケートで頂いたコメントのいくつかをご紹介致します。

  • FieldViewのケーススタディを知るために参加しましたが、開発元のIntelligent Light社に直接質問し要望を伝えることができ、大変有意義でした。
  • Pointwiseのワークショップに参加しましたが、現在かかえている設計課題に対するコンサルティングを希望します。
  • HELYX®のターボ機械への適用や流路のトポロジ最適化について理解を深め、実際に使用して体験することができました。
  • HELYX®の2つのワークショップに参加しました。その結果、今設計中の製品にも適用可能なことがわかりました。
  • DAKOTAとHELYX®のワークショップに、最新バージョンの情報を得るために参加しました。活用事例、活用のためのノウハウ共有の場を作っていただけるとありがたいです。

来年の弊社ユーザー会「VINAS Users Conference 2017」は、2017年10月12日(木)、13日(金)の2日間 東京コンファレンスセンター・品川にて開催する予定です。国内外の適用事例、開発元ならびに弊社による最新製品情報をお届けします。

【開催予定】  VINAS Users Conference 2017

2017年10月12日(木)・13日(金)

東京コンファレンスセンター・品川 5F大ホール