ご質問への回答集(Q&A)

はじめに:OpenFOAM®の歴史とコンセプト

1.なぜ2004年にFOAMの開発を終了したのですか?
1.2004年当時Nabla社(注:OpenFOAMの元となるFOAMオリジナル開発者Prof. Hrvoje JasakとHenry Wellerが1999年に設立)では会社規模も小さく、セールス、マーケティング、サポートを十分行えなかったうえにカスタマが7社のみでした。また当時はFluentが最大のコマーシャルCFDソルバで、これにビジネスとして対抗することは賢明でなないと判断したので、FOAMをオープンソースソフトウェアOpenFOAMとして存続させることにしました。
2.GPLライセンス方針が変更されるとの情報がある。OpenFOAMはこれに対応しますか?
2.現在計画はありませんし、必要ないと考えています。
3.OpenFOAMの適用範囲は非常に広いと理解していますが正しいですか?
3.今回紹介した以外にも、常に企業・大学との共同で15以上の物理モデルなどを開発しています。ただし、これらのモデルや機能はすべてのユーザーに対して必要なものではありませんので、今後のバージョンアップで全てが新機能として含まれるわけではありません。

ソルバ設定と並列計算による計算の効率化

4.並列化の手法には種々ありますが、これらは全てOpenFOAMでサポートできますか?
4.サポートできます。
並列化のスキーム、メッシュの領域分割法など、対象問題によって使い分けることができます。将来的にこれらに対してのガイドラインを作成することも考えています。
FSIやマルチフィジックスでは、流体・固体で計算負荷が異なるため、領域分割法がそれぞれ異なることになります。
5.GPUを正式にサポートする予定はありますか?
5.現在は一般向け、開発者向けの2種類のバージョンがあります。ただし、現状は期待していたほどのパフォーマンスを発揮できていません。この理由はメインメモリとGPU間のデータ転送時間がボトルネックとなっているためで、これを解決する必要があります。ただし、GPUでの計算自体では十分なスピードアップが発揮できています。今後のさらなる開発が必要となります。

応用事例紹介(1) 車体外部流とその応用

6.液膜計算で多面体セルを使用しているが、シンプルなジオメトリでは多面体メッシュからテトラ・ヘキサメッシュへの変換で問題はないと思いますが、複雑なジオメトリでは多面体メッシュへの物理量の受け渡しにエラーが発生しませんか?
6.特に問題ありません。
多面体セルを使用する理由には3つあります。
まず、離散化がシンプルかつ高効率で計算もロバストなため。
次に、ヘキサメッシュがベストではありますが、複雑なジオメトリへはメッシュ生成が困難です。さらにメッシュ生成自体を並列化できないという問題もあります。この反面、多面体セルは複雑なジオメトリへも柔軟に対応でき、メッシュ生成時間も短くて済みます。従って、複雑なジオメトリを含む箇所へは多面体セルを使用し、それ以外にはヘキサメッシュを使用すると計算自体も高速かつ高精度で効率良く実行することができます。
最後に、メッシュ生成によるターンアラウンドが短くすむ点です。数年前なら何日もかけてメッシュを作成して何日もかけて計算を実行することがよくありましたが、今はそうはいきません。 これらが多面体メッシュを使用する理由です。
OpenFOAMとして最も重要な点は、ユーザーが必要とするメッシュタイプ全てに対応することです。
7.液膜冷却解析について、蒸発現象にも対応できますか?
7.エンジン筒内燃焼解析で蒸発過程をシミュレーションしています。ただし、熱伝達による冷却効果が問題ですね。
8.液膜解析での物理モデルは水槽などの自由表面にも応用できますか?
8.例えば、液滴の変形シミュレーションでは気相と液相の連成になりますが、その界面に液膜モデルが応用されています。さらに液滴の変形ではダイナミックメッシュで対応しています。
9.液膜解析で解析解と数値解がマッチしているが、接触角は考慮されていますか?
9.接触角は実験でしか得られませんが、これを解析に取り込むことができればベストとなります。
10.液膜解析での物理モデルはどのようにして開発されましたか?
10.ヨーロッパでの自動車メーカー2社との個別の共同開発です。ただしソースコードは公開されていません。なお、要素技術は応用できるのでコンサルティングプロジェクトでこの技術を再構築することができます。

OpenFOAM®有効活用のためのPointwise/FieldView

11.Pointwiseで作成したメッシュをOpenFOAM形式に変換するコマンドはどれを使えばいいですか?
11.Pointwiseから直接OpenFOAM形式のメッシュデータ(boundary, neighbour, cell…)が出力されるので変換の必要はありません。

応用事例紹介(2) 自由界面流れ

12.圧縮性混相流や爆発解析での解析不安定性は?
12.不安定性は大きいですが、ほぼ1年かけてこの問題を解決しました。
特に圧力や密度の変化幅が非常に大きいことと、爆発時の圧力波の伝播を解明するところが難しい点でした。
13.自由表面解析での相対速度の式でのαとは何を指しますか?
13.体積分率でγと同じです。0が液相で1が気相、界面が0.5になります。
14.解析結果で自由表面の界面がぼやけることがあるがこれについての対処は?
14.内部的に負の粘性を与える処理を施すことで、界面が数セルに拡散することを回避しています。
15.US Navyでのプロジェクトの実績は?
15.もっとの大きなプロジェクトはコンテナ船を対象としたもので2006年から開始しています。このプロジェクトでは船体内部でのスロッシング、船体の移動と波動による影響が問題となりました。ただしこれらの詳細については機密の関係で公開されません。
16.複数の浮体を対象とした例が紹介されたが、これは6自由度衝突解析か?
16.この例では接触は考慮していません。あまり物体が近づくとメッシュが潰れるため、スライディングメッシュや物体間のメッシュを動的に入れ替える方法と採用しています。
17.2次元解析のポスト処理には何を使用したか?またスライディング面で隙間ができてしまうがこれの対処方法は?
17.今回紹介したケースではParaviewを使用しています。ただし多面体セルはサポートされていないので3角形と4角形に分割する必要があります。隙間の発生はParaviewの仕様であり回避できません。
18.浮体周囲にスライディングメッシュを使用した計算例で、アニメーションでは自由表面がスライディングメッシュの位置で不連続に見えるがこれはなぜでしょう?
18.計算上、スライディングメッシュでは連続性が保たれています。ただし、ParaViewがスライディングメッシュ面の内部と外部のセルの表面を個別に表示するので不連続に見えるように表示してしまいます。これは、ソルバではなく可視化の問題です。なお、FieldViewではすでに数年前から多面体メッシュには対応済みで、自由表面を等値面で表示させる場合にこのような可視化によるエラーは発生しません。

ターボ機械向け新機能と適用事例

19.現在、ターボ機械の完全非定常動静翼モデルを48コアで9時間かかって計算しています。汎用ソルバでライセンス料金も年間数千万円必要になります。OpenFOAMには期待していますが、今後は最適化も視野にあるので30分程度で解析が終了でき、かつ使い勝手も良くなることを望みます。これが可能になれば、非定常解析によって、さらに振動・騒音問題にも適用できます。
19.ターボ機械では、現在は流体構造連成にも取り組んでいるところです。これによりさらに高度な非定常現象の解明もOpenFOAMで可能になります。
20.動静翼スライディング面でのMaster/Slaveの定義方法は?
20.Masterは静止側、Slaveは回転側です。ただし、Slave側の各タイムステップでの移動量は最小セル幅の10%以下を推奨しています。
21.密度ベース圧縮性ソルバの開発状況は?
21.現在進行中ですが資本も必要。スポンサーとし参画していただければ開発を加速できます。

カスタマイズ機能とWikki社によるカスタマイズ事例

22.カスタマイズしたいのですがドキュメントが少ないのがネックです。
22.ドキュメントの重要性は理解しており、現在製作中です。
これはOpenFOAM Documentation Projectで進行中ですが、エキスパートレベルの知識が要求されます。
この一環として、クロアチア・ザグレブでOpenFOAM Summer Schoolを定期開催しています。ここには学生を中心に若手や企業からの参加があり、成果を企業・大学に持ち帰り広めてくれています。現状は毎年50人程度の参加者で大規模とは言えませんが、今後規模を拡大したいと考えています。これが自分にとってのミッションのひとつであると考えています。

OpenFOAM®の開発計画

23.Windows版の開発について紹介されましたが、Linux版の開発は継続しますか?
23.自分自身はOpenFOAMをLinuxでしか使いません。ただし、一般にはWindowsの需要も大きいことは事実です。また個人的にはMacOSでも使用したいと考えています。
このように、今後ユーザーのニーズに合わせて、Linux,. Windows, MacOSに加え、IBM Blue Geeneなどのハードウェアへのプロジェクトベースで対応していく予定です。

参加登録申込み

1992年、クロアチア ザグレブ大学卒業。その後、英国インペリアル・カレッジ(Gosman研)にてPhD(Mechanical Engineering)を取得。CD-adapco社 シニア・ディベロッパ、Fluent社 コンサルタントを歴任。2000年、Henry Weller氏(現OpenCFD社代表)とともにNabla社を設立し、OpenFOAM®(現在OpenCFD社が著作権を所有)の前身であるFOAMの開発を共同で行う。2004年、Wikki社設立、代表に就任。OpenFOAM®の機能拡張、ユーザーサポートなどを進めている。クロアチア ザグレブ大学教授、スペイン サラゴサ大学客員教授、チリ フェデリ・サンタマリア工科大学と各国の大学でも教職を歴任。

WIKKI

OpenFOAM®のご紹介

共催企業

株式会社ファームフロー

株式会社キャンパスクリエイト